パグ

●パグの歴史

パグは最も古い犬種のひとつであり、祖先は紀元前2000年くらい前の古代アジアにいたとされ、当時はまだ大型犬であったと推定されています。チベットの僧院で飼育され、チベタン・スパニエルやペキニーズなどを使って交配されて小型化したと伝えられています。
その後、仏教を通じて中国に入り、魔よけになるとして中国の皇室で大切に飼われていました。最初の記録は紀元前600年頃から、中国の美術品や文献に登場し、この頃にはパグらしい容姿になっていたようです。

長く中国国内で飼われていたパグの祖先をヨーロッパにもたらしたのは、世界初の株式会社と言われ中国との交易も進めていたオランダ連合東インド会社とされています。
オランダにわたったパグは王室や貴族に愛され、とりわけオランダ王室とは浅からぬ縁を保ち、王室で繁殖されたり、絵画に登場したり、王室の墓標に刻まれたりと、長く愛されることになりました。やがて、王室ひいきの犬としてオランダ国内で人気が高まり、王室や貴族以外にも官僚や軍人、資産家などにも飼われるようになりました。

17世紀になるとオランダのスペイン侵攻により、オランダ軍人が連れていたパグの存在がヨーロッパに伝えられ、さらにイギリスにわたることになります。当初は王室や貴族の愛玩犬だったパグは、やがて、当時イギリスの富裕層に流行していたキング・チャールズ・スパニエルと人気を二分する存在となりました。
18世紀にはフランスのナポレオン皇帝の妻・ジョセフィーヌの愛犬として、彼女の危機を何度も救ったという逸話があります。
アメリカに伝わったのは19世紀、1885年にアメリカンケネルクラブに公認されました。
そして20世紀、戦中から戦後の1900年代前半になって、日本にも愛玩犬としてパグが入ってきたのです。


●パグの飼い方

パグは活発ではなく太りやすいため、運動は必要です。健康な個体なら、1日に30分くらいの散歩と、室内での遊びなどを行いましょう。
ただし、暑さ寒さに大変弱く、特に夏は熱中症にかかりやすいので、無理をしてはいけません。暑い時期は涼しい室内で運動をさせ、栄養管理に気を配りましょう。

明るく人懐こい性格で比較的飼いやすい犬種ではありますが、わがままになるほど甘やかすと、テコでも動かない頑固さが前面に出てきてしまいます。
いつも考え事をしているような顔をしていますが、賢い方ではありません。
しつけは根気よく教えてあげましょう。

パグは短毛でトップコートは滑らかな毛質ですが、ダブルコートなので下毛があり、換毛もしますので、抜け毛はあります。暑さ対策や皮膚病対策のため、ブラッシングは定期的に行ってあげましょう。
においは少ない傾向ですので、シャンプーは1カ月に1度くらいでも良いでしょう。
ただし、顔や体のしわには汚れがたまりやすく、においや皮膚病の原因にもなりますので、こまめにふき取ってあげましょう。

カニヘンダックスフンド

●カニンヘンダックスフンドの歴史

中世の頃に作出されたと言われるダックスフンドは、当初は体重10kg以上あり、15kg程度のものもいたとされ、現在のスタンダードダックスフンドよりさらに大きかったと推測されています。この当時のサイズや体系の類似から、バセットハウンドと共通の祖先ではないかとする説もあるようです。
オーストリアとドイツの国境付近の山岳地帯で固定化が始まったとされるダックスフンドは、嗅覚を使って獲物を追い詰めるハウンドドッグであり、アナグマやキツネ、ウサギなどを狩る猟犬としてその性質を高められてきました。

ダックスフンドには3つのサイズと3パターンの毛質がありますが、これらはルックスの趣味で選抜されてきたのではなく、ワイアーヘアーは水にも強いように、ロングヘアーはアナグマが反撃の際に使う爪によって体を傷つけないように、スムースは狭い巣穴や薮の中でも引っかからずに進めるようにと、地域や目的に応じて変化をつけられてきたものです。
カニンヘンダックスフンドが小さく作られたのは、愛玩用にそうしたのではなく、獲物の中で最も小さいウサギを狩るために作られた犬だからなのです。カニンヘンダックスフンドは原産国ドイツではラピット(ラビット)ダックスフンドとも呼ばれています。
小さいことで愛玩犬向きと思われがちですが、21世紀の現代もダックスフンドを猟犬と考えている原産国ドイツのダックスフンド(テッケル)クラブでは、カニンヘンこそが最も「猟に対して情熱的」としているほどで、小さな体に大きなエネルギーを持ち、活発に動くことこそカニンヘンらしさであるというわけです。

ミニチュアダックスフンドとカニンヘンダックスフンドのサイズ固定が始まったのは、19世紀になってからと言われています。19世紀末から20世紀初頭までの戦時中、戦争国では多くの犬たちが犠牲になり、純血種の作出が止まりました。ダックスフンドもまた人気が下降するとともに、雑な繁殖や極端な近親交配が目立つようになり、犬質が低下していきました。
そこで1910年頃から、ミニチュアとカニンヘンの改良を目的として、犬種クラブの合意により他犬種による交配(アウトクロッシング)が行われることとなりました。一時的とはいえ、犬種固定のためのアウトクロッシングは大変珍しいことで、スタンダードダックスフンドを土台にして、スムースにはミニチュアピンシャーを、ロングヘアーにはパピヨンを、ワイアーヘアーにはミニチュアシュナウザーを交配することになりました。
異なる毛質の基礎となった犬種の影響はダックスフンドにも少しずつ表れており、スムースは気が強く繊細で、ロングヘアーは活発で愛想よく、ワイアーヘアーは賢く服従性が高いという傾向が出ているとされることも多いようです。


●カニンヘンダックスフンドの飼い方

カニンヘンダックスフンドは活発で体を動かすのが大好きな犬種ですので、運動不足は不健康であるばかりでなく、ストレスによる問題が起きてしまいます。
サイズが小さくても、特に若犬のあいだは、1日に合計で1時間程度の散歩をしてあげたいものです。
遊びも大好きですので、気候の厳しい季節は室内でのボール遊びやゲームなどの時間をたっぷりと取ってあげるのも良いでしょう。

やや保守的な傾向があり、家族に対しては愛情深く、それ以外の人や犬に対しては距離を置くなどの態度を示すことが多いようです。
相性が悪い相手には吠えるなど、けんかっ早い面を見せることがありますが、子犬の頃からドッグランや公園などに連れ出し、社会性を育むことで、過度の興奮が抑えられ飼いやすくなります。
愛玩犬ではなく猟犬であることを念頭にしつけや訓練を行いましょう。
賢いので飲み込みもよく、しつけは難しくありません。

カニンヘンダックスフンドの被毛の質は3タイプありますが、基本的にほとんどがダブルコートですので、被毛は抜けます。ワイアーとロングヘアーは週に2回以上はブラッシングをお勧めします。スムースも抜け毛はありますが、ほかの2種類よりは手入れが楽でしょう。
サイズが小さいだけに冬の寒さや夏の暑さの影響を受けやすいため、特にスムースタイプでは、衣類の着用も検討しましょう。

パピヨン

●パピヨンの歴史

パピヨンの祖先は、スペイン原産のトイ・スパニエルとされています。イタリアのボローニャ地方で繁殖され、16世紀にはフランス国内に入って、王侯貴族たちに寵愛を受けていました。
王侯貴族を描いた中世の絵画には、時々パピヨンもモデルとして登場しています。王妃マリー・アントワネットの愛した犬として知られており、彼女が処刑台に上がる直前まで、パピヨンが一緒にいたとも伝えられています。

「パピヨン」の名称になったのはずっと後のことで、初期のパピヨンは耳よりも華やかな尻尾に注目されていたので、スカーレル(リス)・ドッグ、スカーレル・スパニエルなどと呼ばれていたそうです。当時は垂れ耳タイプ(現在のファーレン)が多く生まれていましたが、立ち耳のパピヨンも時々生まれていたようで、古くから王侯貴族を描いた絵画の中に登場していました。

現在のような耳が立ったタイプのパピヨンは、18世紀末頃から選択的に交配されて増えていき、19世紀頃になるとイタリア、フランスに続いてベルギーでも繁殖されるようになりました。立ち耳であるスピッツと交配して蝶のような大きな立ち耳を持つようになり、チワワとの交配でサイズは小さくなりました。そして現在のパピヨンに近い洗練された姿となって、人気が高まっていきました。そのため、現在のスタイルのパピヨンは、ベルギーを原産とするという見解もされています。
また、この頃からようやく、パピヨンという名前で呼ばれるようになりました。垂れ耳のパピヨンをファーレン(フランス語で蛾という意味)と呼びますが、同じ犬種として認められています。


●パピヨンの飼い方

折れてしまいそうな細い手足のパピヨンですが、健康な個体は大変活発で、飼い主と一緒にドッグスポーツを楽しむこともできます。
また、大変賢く、訓練競技会に出場する犬もいます。
愛玩犬ですので、人に甘えるのも大好きです。
しかし、賢く甘えん坊なだけに、周囲の状況に敏感に反応しすぎてしまい、神経質になってしまうことがあります。特に若いうちは甘やかしすぎず、きちんとしつけをしましょう。ドッグスポーツや訓練などを飼い主が一緒に取り組んで、いろいろな経験をさせ、自信を持たせることで落ち着いた犬になります。

パピヨンは長いコートに覆われた毛質ですので、週に2~3回くらいはブラッシングをしてあげましょう。
なお、パピヨンは、長毛のみのシングルコートと、密生した下毛のあるダブルコートの2種類のタイプがあります。
初期のパピヨンはシングルコートだったようですが、交配の過程でスピッツの血が入ることにより、アンダーコートを持つようになったと言われています。犬種標準ではシングルコートと規定されている国もありますが、北欧など寒冷地では、ふかふかした下毛のあるほうが生活に都合が良いため、ダブルコートのパピヨンは必ずしも規格外ではありません。

小型犬のほとんどは、あごが小さく歯も小さいため、少しの虫歯でもすぐに歯が悪くなります。歯石がつくと口臭の原因になりますので、歯磨きも積極的にしてあげたいものです。

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