連日厳しい猛暑が続く今夏、例年以上に「汗」が気になる人も多いのではないだろうか。汗をかくとアトピー性皮膚炎のかゆみが増したり、あせもや炎症などの肌トラブルにつながることが少なくない。しかし、汗は本当に悪者なのだろうか? 

汗の役割とは

汗には「体温調節」の機能があります。例えば体重70kgの人が運動などで上がった体温を1度下げるには、100mLの汗をかくことが必要で、皮膚表面に出た100mLの汗全てが蒸発する気化熱で体が冷やされることによってようやく1度下げられます[注1]。通常、健康であれば環境と体温上昇に応じて、暑い日にはその分たくさん汗をかいて体温調節をしているのですが、少しでも汗をかきにくい状態になると容易に体温が上がりやすくなり、うつ熱(体内に熱がこもる状態)や皮膚温の上昇が生じ、熱中症のリスクにもつながります。

 2つ目に、汗には「保湿」作用もあります。汗の中には乳酸ナトリウム、尿素など、水と親和性の高い天然保湿因子が含まれています。皮膚の保湿にはこういった汗の成分が大きく貢献しており、汗をかけない人はドライスキン(乾燥肌)になっていきます。

 3つ目に、汗の中には抗菌ペプチドなどの「生体防御」に関わる物質も含まれています。抗菌ペプチドは皮膚表面で悪影響を及ぼすバクテリアの細胞膜に付着して、その発育を抑えます。皮膚表面でもいわば善玉、悪玉というような各種の菌が共生していますから、汗がきちんとかけるということは、適切な菌の発育に貢献し、細菌叢(そう)のバランスを整えるのに重要だと考えられます。

 さらに、アレルギーの原因となるダニなどの抗原は、プロテアーゼと呼ばれるタンパク分解酵素を持っていて、タンパク質を溶かすことで皮膚に入り込み炎症を引き起こすのですが、汗にはこれらのタンパク分解酵素を抑える作用があることが報告されています(抗原失活)。ですから汗をかくことで、アレルギーの原因となる抗原の悪影響も、ある程度抑えられるのではないかと考えられます。

かいた汗を放置するのはダメ

汗はかいてすぐのうちは皮膚表面にとどまって保湿や抗菌などのメリットを発揮しますが、時間とともにそのメリットが損なわれるようです。
抗原失活効果は汗をかいてから45分後には著明に低下するという報告があります。

そもそも汗は蒸発することによる気化熱で体を冷やす働きがあるため、かいた汗が全部速やかに蒸発して、皮膚表面に残らないのが理想的な発汗といえます。
テカるような汗や流れるような汗をかいたときは、放置せずにタオルやおしぼりなどで吸い取るか、水で洗い流すかしたほうがいいでしょう。

皮膚表面に残った汗を長時間放置すると、皮膚に様々な悪影響が出てくることも分かっています。
一つはあせも。
これは汗が通る道筋(汗管)が詰まることによって水ぶくれや皮疹ができるもので、肘の内側や膝の後ろや、首など、蒸れて汗がたまりやすい場所にできます。
あせも以外にも、汗と皮膚表面のほこりなどが混ざってたまると、それが刺激になってかゆみや炎症を引き起こすこともあります。

さらに、そうした場所を放置すると汗をかきにくくなることもあります。1967年に、ザルツバーガーというアトピー性皮膚炎の名付け親でもあるアメリカの皮膚科医が、48例の成人男性の左側の背中にラップを48時間貼って密閉した実験があります。
48時間後にはラップを貼ったところにあせもができていたのですが、ブロムフェノールブルー反応(発汗がある部分は青色になる)で見ると、あせもができたところは、多くの被験者がその後ラップを外しても約2週間汗が出ていなかったのです。
皮膚は長時間湿潤した環境下に置かれると、汗の出口が閉塞してあせもができたり、汗をかきにくい状況に陥ることが示唆されています。

このように、汗をかいたあと長時間放置することは、メリットが少なく、逆にデメリットが多いことが分かっています。
汗はかいても全く問題のないもの。ただし、それを放置せず、速やかに拭き取ったり、洗い流したりすることが大切なのです。

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