べたべたしたり、ニオイがしたり、汗は何かと嫌われがちな存在。しかし、実際には体温調節機能など、人間にとって汗は大切なもの。人がどうして汗をかくのか、その理由と仕組みを紹介する。

汗の大切な役割は体温調節

暑いときや緊張したとき、顔や手のひら、体からじわっと出てくる汗。べたべたするし、服は濡れるし、化粧は崩れるし、なんだかニオイそうだし…と、ちょっと嫌われがち。しかし、そうは言っても人間にとって汗は必要なものなのだ。もし、人が汗をかかなかったらどうなるのだろうか。

汗の重要な役割は、「体温調節」。人は一定の体温を保った恒温動物である。心臓などの臓器の温度は核心温と呼ばれ、およそ37度に保たれていると言われている。これに対し、皮ふ表面や筋肉などの温度は外殻温と呼ばれ、体の内外の熱を入れかえる役割を果たしている。

運動や暑い外気に触れるなど、体内で熱が生産されたときに、体外へ熱を放出することで熱量のバランスを取り、体温を一定に保っているのである。その一役を担っているのが汗だ。汗には熱を体外へ放出するという大切な役割があるのだ。

エクリン腺は体温調整の役割

汗が出る腺は2種類ある。

「エクリン腺」は、爪の下や唇以外の、体のほとんどの部分に分布している。皮膚の表面から1~3ミリの所、真皮層から皮下組織の上部にかけて存在する。その大きさはかなり小さく肉眼ではほとんどみえない。多い人は約500万個、少ない人で約200万個、平均すると約350万個ある。しかし、すべてのエクリン腺が汗を出すわけではなく、実際に活動しているのは半分程度。この活動しているエクリン腺の量が、汗の量を左右し、体温調節のためにはたらいているのだ。
エクリン腺からの汗はほとんど(99%以上)が水で、そのほかにはごく少量のナトリウムや塩素、カリウム、カルシウム、重炭酸イオン、尿素、アンモニアなどが含まれている。この成分は、血漿の成分とほぼ同じ。

エクリン腺からの発汗の種類

●温熱性発汗
暑いときや運動したときなど、体温調節のために体からかく汗。

●精神性発汗
緊張したときや何かに驚いたときに出る冷や汗。手のひらや足の裏、わきの下などから出る。

●味覚性発汗
辛い物を食べたときに額や鼻などにかく汗。

ニオイのもととなる汗を出す「アポクリン腺」

外耳道や外陰部などごく限られた場所にのみ分布し、ほとんどがわきの下にある。皮下組織の上部で毛穴と一致した所に存在し、その腺体はわきの下では肉眼で十分見えるほど大きい。 アポクリン腺の役割は、体温調節ではなくニオイの原因となる汗を出すこと。動物にとっては仲間同士の確認や異性をひきつけるフェロモンのような役割があるため、体臭は必要なもの。人間のニオイにも同じような役割があるとも言われている。しかし、最近は、ニオイに敏感な人が多く、アポクリン腺の分泌液のニオイは「ワキガ」などと呼ばれて、すっかり嫌われている。

アポクリン腺の量は人種によって、また個人によってもかなり差がある。また、一般的には黒人・欧米人には多く、日本人や中国人には少ないと言われている。 アポクリン腺からの汗の成分は、塩分が少なくたんぱく質・脂質・糖質・アンモニア・ピルビン酸・鉄分などさまざまな成分が含まれており、粘り気がある。

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