アメリカンカール

●アメリカンカールの歴史

アメリカンカールは猫の純血種の中でも新しく、繁殖の基礎となった猫が発見されたのは1981年6月のことでした。
カリフォルニア州レイクウッドに住んでいたルーガ夫妻が、自宅玄関で見つけた黒く美しい長毛の若猫は、外側に反りかえった形の耳を持っていました。人なつこく愛らしいその猫は、ルーガ夫妻の家庭に迎えられ、シュラミスという名前を与えられました。その半年後、1981年12月にシュラミスは子猫を出産しました。その4頭の子猫のうち、2頭はシュラミスと同じ形の耳を持っていたのです。
シュラミスの耳の形は当初は一部の猫愛好家や遺伝学者などの議論にとどまっていましたが、この出産により、耳の形が遺伝することがはっきりしました。
1983年には、猫愛好家や繁殖家によって品種として作成する計画が立てられ、繁殖が始まりました。
猫の遺伝学を研究していたイギリスの学者ロイ・ロビンソンは、アメリカンカールの繁殖者と協力して、81頭の母猫から生まれた合計383匹の子猫を調査分析しました。その結果、耳の形の遺伝子は突然変異で起きた独特のものであり、奇形ではないこと、優性遺伝子であることを確認しました。さらにロビンソンは、1989年の発表で、この耳の形は遺伝疾患を伴わないとしました。
耳の形が前に垂れている猫としてスコティッシュフォールドがありますが、この垂れ耳は奇形を発現する遺伝子によるもので、垂れ耳タイプのスコティッシュフォールドは体の弱い個体が多いことが知られています。しかし、アメリカンカールの場合は、健康な猫の突然変異が固定化したものと考えられています。
シュラミスの親猫がそうであったように、もとが土着の猫だったアメリカンカールは、多様な遺伝子を持つため、純血猫としては大変頑健であるとされています。
アメリカンカールは繁殖が始まってから30年程度しか経っていないことから、遺伝子の多様性をはかり健全な品種とするために、2014年現在は雑種猫との交配を認めている団体があります。また、アメリカンカールの正しい血統書がついていても、耳が巻かないタイプの個体もあります。
心身ともに健康な猫種を育成するためにこれらはどうしても必要な存在であり、長い時間をかけてアメリカンカールという猫種を作り上げていく経過でもあります。
アメリカンカールを求める時は、このような状況も踏まえて、しっかりと検討したいものです。


●アメリカンカールの飼い方

アメリカンカールは遊び好きではありますが、ネズミ捕りのような激しいハンティングよりは、ちょっとした遊びを好みます。
人にかまわれることが好きですので、一緒に遊べるおもちゃなどを用意してあげましょう。
テリトリーへの執着が少ないため、多頭飼育でもトラブルは少ない猫です。
1頭でいると大変さびしがりストレスになりますので、留守番の多い家庭では2頭飼育を検討するのも良いでしょう。
耳が外巻きになっているのは、軟骨の変形です。耳掃除などのケアは丁寧に行わないと、けがをすることがあります。
長毛タイプはシングルコートか、ダブルコートの場合でも下毛は非常に短く少ない生え方をしていますので、手入れは比較的楽です。絡まらないように、週に何度かコーミングまたはブラッシングをしてあげましょう。
短毛タイプは逆にダブルコートが多く、絡まることは少ないものの換毛期にはよく抜けますので、長毛タイプと同じくらいの手入れをしてあげましょう。


●アメリカンカールの毛色

アメリカンカールの被毛は長毛と短毛があり、あらゆる毛色が存在し、認められています。


●アメリカンカールの気を付けたい病気

アメリカンカールは比較的新しい猫種でありながら、遺伝疾患の少ない猫とされています。
平均寿命は12~15歳とされていますので、心臓疾患、眼病、関節疾患など、年齢に応じて起こりやすい疾患に注意しましょう。

セルカークレックス

●セルカークレックスの歴史

セルカークレックスは自然発生猫種で、1987年頃に発見された極めて新しい品種です。
祖先猫となる巻き毛の猫が見つかったのは、アメリカ・モンタナ州にあった動物保護施設で保護されていた5頭の子猫の中の1頭でした。この子猫を引き取ったのがペルシャの繁殖家でなかったら、セルカークレックスという猫種は生まれなかったかもしれません。
巻き毛の猫を引き取った繁殖家ジェリー・ニューマンは、巻き毛の猫にペストと名付けました。抱き上げてみると、骨量を感じさせるしっかりした体でした。
ほかの巻き毛種のコーンウォールレックスやデボンレックスがこの地域にいなかったこと、ペストの同胎の子は直毛であったことを確認し、ニューマンはこの巻き毛が突然変異であると考え、新しい猫種となる可能性を感じ、自らの黒いペルシャと交配しました。そして6頭生まれた子猫のうち3頭が巻き毛であったことにより、この毛質が遺伝であることを確信したニューマンは、ほかの繁殖家とともに新しい巻き毛の猫の育種を始めました。
その後、この新しい巻き毛の猫には、長毛の毛質と人懐こさを高めるためにペルシャと、忍耐強い性格を与えるためにブリティッシュショートヘアと、明るい性格を与えるためにエキゾチックショートヘアとの交配が行われました。
こうして、ペットとしてふさわしい容姿と性格を持つ、新しい猫種として育種は勧められました。
名称のもととなったセルカークは、シェルターのあるモンタナ州の山の名前から取られ、TICAは1990年、新品種登録のための予備期間として経過観察を開始しました。そして1992年にはTICAで、1998年にはCFAやほかの団体で、新しい猫種として認定登録されることになりました。
セルカークレックスは20世紀終盤に新品種となったばかりの猫種です。CFAでは純血種として遺伝子の多様性を確保する目的で、2015年まではアメリカンショートヘア・ブリティッシュショートヘア・ペルシャ・エキゾチックショートヘア・ヒマラヤンとの異種交配が認めています。


●セルカークレックスの飼い方

セルカークレックスは落ち着いた性格の猫ではありますが、子猫から若猫の時代は活発な面をかなり強く見せ、ネズミ捕りなどのハンティングも大好きです。成猫になると落ち着いて太りやすい傾向がありますので、子猫の頃から遊びによって体を動かすことを怠らずに習慣づけましょう。
体が大きくなりますので、キャットタワーを設置する時は、足場がしっかりと安定したものを選んでください。
セルカークレックスは被毛の手入れは重要です。抜け毛も少なくはないため、アレルギーのある人には勧められません。
また、巻き毛タイプは皮脂の多い傾向があり、抜け毛が体にとどまりやすいため、手入れを怠ると皮膚病の原因になることがあります。シャンプーを嫌がらないために、子猫の頃から慣らしておくようにしましょう。
短毛でも巻き毛タイプの場合は週に2~3回、セミロング以上の長さの場合はできれば毎日、ブラッシングまたはコーミングを行ってあげましょう。


●セルカークレックスの毛色

セルカークレックスは非常に多くの毛色があり、すべての毛色とパターンが認められています。


●セルカークレックスの気を付けたい病気

セルカークレックスは自然発生種が基礎になっているため、基本的には頑健な猫種です。
しかし、品種育成のため導入されたペルシャには遺伝性疾患が多く、腎不全を引き起こす多発性のう胞腎や、肥大型心臓病などの素因を受け継いでいる可能性はあります。
中高齢になると腎不全はどのような猫でも起こりやすい疾患ですが、治療の方法はありませんので、食生活などで生活を管理していくことになります。多飲多尿はこの病気のサインですので、見逃さないように気をつけましょう。
後天的な疾患としては、巻き毛の個体では皮脂の分泌が遺伝的に多い傾向があります。日本の高温多湿の気候では、脂っぽい皮脂を放置すると、真菌症や脂漏性皮膚炎、外耳炎などの原因になることがありますので、お手入れは必ず行ってあげましょう。
ペルシャ同様、鼻の短い猫種ですので涙管も短い場合が多く、目の周りに涙があふれやすくなっています。放置すると湿った部分に雑菌が繁殖する場合がありますので、こまめに拭き取ってあげましょう。

アビニシアン

●アビシニアンの歴史

アビシニアンの起源には諸説あり、原産国もエジプト、エチオピア、イギリスとされることがしばしばあります。
信ぴょう性はともかく、古い順番としては、古代エジプトの壁画や出土品に描かれていたネコの特徴がアビシニアンに似ていることから、エジプト原産という説が立てられました。
アビシニアンという名前の由来にもなったとされる説として、1868年のイギリス・エチオピア(旧名アビシニア)戦争から帰還したイギリス兵が持ち帰ったとするものがあります。この時に祖先猫とされたのはズーラという名前のメスであったという話も伝わっており、長い間信じられてきましたが、近年この説にも懐疑的な見方が増えてきているようです。
近年の遺伝子分析研究では、インド大陸ベンガル湾周辺の土着猫が祖先である可能性が指摘されています。
オランダのライデンあるナチュラリス生物多様性センター(自然史博物館)には、アビシニアンと大変よく似ている猫の剥製が保存されていますが、その猫は1830年代中ごろにインドから来たものと説明されています。イギリスは古くからインドと交易があるため、この説は現在、最も有力なものとして考えられています。
さらには外観上の類似点から、イエネコの祖先であるリビアヤマネコとも血縁が近い可能性もあるとされています。
起源はさておき、アビシニアンはイギリスに入ってから改良され、1870年頃にはキャットショーにデビューしました。イギリスの猫血統管理団体であるGCCFに品種登録された後、1927年頃にはフランスでも本格的な繁殖が始まりました。さらに1935年頃からはアメリカで繁殖が開始されたのち、デンマーク、スウェーデン、オランダ、オーストラリア、日本に渡り、世界中でたくさんの人に愛される猫種となりました。


●アビシニアンの飼い方

アビシニアンは活発で遊び好きであり、子猫から若猫時代は驚くほど敏捷なスピードで走り回ります。
人と遊ぶのも大好きですので、いろいろなおもちゃを用意して、好奇心を育てながら運動させてあげましょう。
賢く洞察力があり、好奇心も強いことから、人間のすることをよく見ています。
しつけにはあまり苦労しないようです。
アビシニアンは短毛ですがダブルコートですので、抜け毛はあります。定期的にブラッシングまたはコーミングを行ってあげましょう。


●アビシニアンの毛色

アビシニアンの主な毛色はルディー、レッド、ブルーおよびフォーンとなります。
アビシニアンの毛色はソリッドに見えますが実はタビーで、1本の毛に色合いの変化がある毛の集合体です。
これをティックド・タビーと呼びます。子猫の頃はしっぽや手足に、よりタビーらしい縞が浮き出ることがありますが、多くは成猫になるに従って、非常に細かいティックドになっていくようです。


●アビシニアンの気を付けたい病気

アビシニアンに起こりやすい遺伝疾患の種類はやや多く、発症数は多くないものの、重症化するものもあります。
重症筋無力症は犬に比べて猫の方が非常に少ない疾患ですが、アビシニアンでは比較的起こりやすいとされています。
突然、四肢に力が入らなくなり、足がもつれる、起き上がれなくなるなどの経過をたどります。
猫では3歳以上で発症することが多く、巨大食道症や嚥下障害などが併発することもあるようです。
また、アビシニアンは歯周病の起こりやすい猫としても知られています。歯周病は加齢とともに進行しますので、長生きする程に歯周病の可能性が高まってきます。猫に歯磨きをするのは難しいですが、人懐っこい性格を活かして、子猫の頃から歯の手入れをさせるように上手にしつけていきたいものです。
アビシニアンの平均寿命は10~15歳くらいと言われています。10歳を越えればかなりのシニア猫になりますが、この年齢になると慢性腎不全が増えてきます。
腎不全は、少しずつ腎臓の組織が衰えていくことで、毒素の排出ができなくなり、尿毒症などを起こして死に至る病気です。水をたくさん飲み、たくさんおしっこをするという多飲多尿の様子は症状の一つです。食事管理などで進行を遅らせることになりますので、気づいた時には早めに動物病院を受診しましょう。

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