ジャックラッセルテリア

●ジャックラッセルテリアの歴史

19世紀中ごろのイギリス・デボン州に実在した牧師、ジョン・ラッセルの手で作出されたジャックラッセルテリアは、比較的新しい歴史の犬種でありながら、映画やテレビなどに多数出演し、爆発的なブームにより短い間に世界中に広がった犬種です。
ラッセル牧師はイギリスケネルクラブ創立メンバーの一人でもありました。
キツネ狩りを愛好したラッセル牧師は、優秀な猟犬を作ろうと考え、フォックス・テリアをベースに、他犬種との交配を始めました。ラッセル牧師は猟の性能を磨くことを目的に、ビーグル、ボーダー・テリア等と交配しました。
その後、キツネの巣穴に潜った時にもひるまないようにさらに強い気質を持つブルテリアなども交配されたことで、見かけのかわいらしさに反する気性の荒い面を持つようになりました。

ジャックラッセルテリアと非常に近縁の犬種に、パーソンラッセルテリアがあります。
もともとは同じ犬種であり、サイズの違いと毛色の規定の違いが犬種を分ける主な基準となっています。ジャックラッセルの方はサイズが小さく脚が短い、パーソンラッセルの方が毛色に白い部分が多いという決まりですが、サイズについてはジャックラッセルにもかなり大きな個体が少なからずおり、犬種の区別を困難にしています。ジャックラッセルの方が足が短いのは、のちに交配したウェルシュ・コーギーの影響がありますが、パーソンラッセルでは体長と体高がほぼ同じことがスタンダードとされているため、コーギーの影響がある個体を繁殖から除く努力が続けられています。また、コーギーを交配したのはラッセル牧師以降の繁殖家で、作業性を失わずに性格を穏やかにする目的があったようです。
このように2つの犬種は同じ祖先を持ちながら、現代においてもその系統を明確に分けるべく努力が続けられている、発展途上の犬種でもあるのです。

原産国であるイギリスでは、パーソンラッセルテリアのみが公認犬種として登録されています。実はラッセル牧師は自ら作出したこの犬種をケネルクラブに登録することを拒んでいました。ドッグショーではなく、狩りのフィールドこそが輝く舞台と考えて作出したことに、誇りを持っていたのでしょう。
ラッセル牧師のこの意志を汲んだ愛好家によって、ジャックラッセルテリアの犬種団体登録に反対しているアメリカなどの国もあります。パーソンラッセルテリアが本国イギリスで登録されていることから、パーソンラッセルのみを登録している国、日本のように両者を登録している国もあります。
昭和の初めごろ、音響機器の宣伝で日本でも知られた絵画「His Master’s Voice」に登場する犬・ニッパーは、ジャックラッセルテリアであったと伝えられています。


●ジャックラッセルテリアの飼い方

ジャックラッセルテリアは小型犬でありながら、運動量は大型犬と同じくらい必要な犬種です。
散歩だけでも1日に1時間以上は行ってあげること、好奇心や知性を満たすためのゲーム的なスポーツも取り入れるようにしましょう。また、これらを通じて飼い主に対する服従心をしっかりと養うことで、扱いやすい性格になります。

愛玩犬の感覚で甘やかして育てると、成犬になって抑えの利かない、手の付けらない面が出てくることがあります。
耳掃除や歯磨きなどを嫌がらずにさせるように、子犬の頃から体を触られケアをされることに慣らしておくことが大切です。

ジャックラッセルテリアは自分より大きなキツネに向かっていくように作出された犬です。猫、フェレットなどと室内で一緒に暮らすことはリスクが伴います。
テリア気質であり、しつこくかまわれることを嫌いますので、小さな子どもとの相性は良くありません。外出先などでも子どもが手を伸ばしてくるときなどは目を離さないようにしましょう。

ペキニーズ

●ペキニーズの歴史

中国原産のペキニーズは、中国語では「ジンパ(京巴)」と呼ばれています。
チベタン・スパニエルが祖先と考えられており、ペキニーズの最古の記録は8世紀ごろになりますが、犬種としての成り立ちはそれよりはるかにさかのぼる紀元前と伝聞されています。
祖先犬のチベタン・スパニエルは、仏教への信仰が厚いチベット原産の犬で、チベットの寺院で僧侶によって繁殖、飼育されてきた犬です。「釈迦はその偉大な力により、どう猛な獅子をも服従させる」と考えていた仏教、ラマ教は、獅子に似た犬となるよう改良したペキニーズを獅子犬とし、諸国宮廷への献上物として秦の始皇帝ほか、歴代の皇帝に贈られてきました。この神聖な獅子犬は、皇帝と皇族以外による飼育を禁じられ、禁を犯して持ち出した者は死刑になったとも伝えられています。
そうしてペキニーズは宮廷外への門外不出として大切に扱われ、西太后が定めたと言われるスタンダード(犬種標準)に沿って、宮廷内のみで繁殖が行われていました。

門外不出のペキニーズでしたが、1860年のアヘン戦争に負けた西太后は、5頭のペキニーズを残し宮殿を離れることとなりました。それをイギリスの軍人が持ち帰り、ビクトリア女王に献上しました。犬好きで知られたビクトリア女王はこれを繁殖し、最初はイギリス国内で王族や貴族にだけ飼われていました。そして1893年に初めてドッグショーに出陳、その鼻ぺちゃな愛嬌のある姿が人気となり、やがて世界中に広がることとなりました。

神聖な獅子犬であるペキニーズには魔よけの力があるとされて、皇族の葬儀では柩を率いて墓へ先導するという役割が与えられていました。
1911年、西太后の葬儀が行われた時も、モータンという名前のペキニーズが棺を墓まで先導したことは有名な話です。


●ペキニーズの飼い方

ペキニーズはダブルコートの犬の中でも、ペキニーズは特に下毛(アンダーコート)の量が多く、喚毛期には大変な量の抜け毛があります。通気により皮膚の健康を保つためにも、毎日のブラッシングが欠かせません。ブラッシングを怠るとたちまち毛玉になり、フェルト状になって、ますます手入れのしにくい毛になってしまいます。

活発な性質ではないため、散歩は気分転換程度の短い時間で十分です。暑さに弱く、呼吸困難に陥りやすいため、夏は散歩に行かない方が良い場合があります。
夏はエアコンをつけて熱中症にならないように気をつけましょう。
運動不足になりやすいうえに太りやすいという体質がありますので、食事の量や質は管理が必要です。

顔のしわには汚れがたまりやすく、放置すると皮膚糸状菌などにより皮膚病になって炎症を起こすことがあります。特に食事の後などは汚れていますので、しわの間まできれいにふき取ってあげましょう。

ペキニーズは長い毛に隠れて見えにくくなっていますが、体型は胴長で脚は短めなので、ソファから飛び降りたりすると、背中や腰に負担がかかります。活発な犬種ではないので、特に高齢になってきたら、休む場所は低い所に作ってあげるようにしましょう。

ペキニーズは性格的に気位が高く、マイペースで、気に入らないことをされると歯を当てても抵抗することがあります。
猫のような性質と頑固さがあるため、しつけがやや入りにくい面があり、飼いやすい犬種とは言えません。
しかし信頼関係が出来上がり、飼い主を主人と認めると愛情豊かに振る舞い、素直で遊び好きの面を出します。
愛くるしい子犬時代に犬の機嫌を取りすぎないように、けじめをつけた飼育をしましょう。

秋田犬

●秋田犬の歴史

秋田犬と書いて「あきたいぬ」と読みます。
21世紀となった今でこそ、秋田犬はどの犬も犬種標準に沿った容姿に整っていますが、これは昭和初期、20世紀になって、純粋な秋田犬の作出と保存運動が起こったことから始まりました。
それ以前の秋田犬は、洋犬やほかの日本犬との雑種化が進んでおり、外見も性格もバラバラだったのです。
そうなった理由は、明治の時代まで闘犬として使われてきた背景と、戦争による犬の供出を回避する目的によるものでした。

秋田犬の祖先となった犬は、この地方に存在した猟師の犬・マタギ犬と考えられています。
江戸時代、秋田県大館地域の領主佐竹氏により始められた闘犬は、主にマタギ犬を選択交配していました。明治に入るとより強く大きくなるように、土佐犬やジャーマンシェパード、グレートデンなどとも交配が進められました。
しかし、20世紀初頭の1916年になると、闘犬は日本でも禁止されました。
闘犬の禁止により秋田犬の存続を危ぶんだ愛好家や研究者などによって、新しい秋田犬の標準が探られ、1919年に発令された天然記念物保存法の指定動物となるべく、改良と作出が始まりました。当時の内務省は秋田犬を視察に訪れましたが、雑種の程度がはなはだしいとされ、天然記念物登録は見送られてしまいました。
関係者はさらに努力を重ね、ついに1931年には天然記念物秋田犬として登録されることになりました。

やがて始まった戦争が、犬種の保存と改良に暗い影を落とします。
「忠犬ハチ公」が話題になったのは1934年頃のことですが、渋谷駅前の銅像は金属供出のため、わずか数年後に一時、取り壊されることになりました。
また、第二次世界大戦が終わるまで、毛皮で防寒衣料を作るため、軍用犬であったジャーマンシェパード以外の犬は軍へ供出することになりました。秋田犬も例外ではなく、苦肉の策としてジャーマンシェパードを交配し、時には犬を疎開させるなど、保存のための必死の努力がひそかに行われ続けていました。
終戦後に残っていた純粋な秋田犬は20頭にも満たず、この犬たちを基礎に、21世紀の現代につながる秋田犬の作出が改めて行われることになったのです。

戦争が終わり、日本に入ってきた占領軍や海外との人的交流により、秋田犬は海外へも持ち出されることになりました。この頃の秋田犬には、ジャーマンシェパードとの混血も多くおり、このタイプの秋田犬がアメリカに持ち出されて人気を博して、のちの「アメリカン・アキタ」の基礎犬となりました。アメリカン・アキタは秋田犬と異なる発展を遂げ、現在は日本を始め世界でも別の犬種として登録されています。


●秋田犬の飼い方

秋田犬は有り余る体力を持てあまさないだけの十分な運動が必要な犬種です。飼い主との信頼関係を作るためにも、運動欲求を満たしてやる必要があります。1日に1時間以上は散歩に連れて行きましょう。
見知らぬ人への警戒心があるため、散歩中は知らない人が触ろうとして安易に手を出さないように、気を付けてあげてください。

猟犬の本能や闘犬の気質を前面に出さないためには、飼い主との十分な信頼関係と訓練が必要です。
力で抑え込もうとして犬に負けた時は、手の付けられないことになりかねません。
子犬の頃からしっかりと、しつけを行いコミュニケーションをとりましょう。
なお、秋田犬は都道府県条例で特定犬種として届け出や飼育管理方法に既定のある地域が多くあります。
飼い始める時に、お住まいの保健所や愛護センターを確認しましょう。

日本犬は意外と抜け毛が多いです。できれば毎日、少なくとも週に2回くらいはブラッシングを行いましょう。

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