オフィシャルサイトが発表している選手の服装規定

1・選手は、会場エリアに入る際には、ほぼ全体白のテニスに適切なウェアを着用すること。

2・オフホワイトやクリームは白に含まれない。

3・全体に色が入ったものは禁止。首回り、袖回り、1センチ幅以下の色付きシングルトリムは許容。

4・模様に含まれる色も規制対象です。ロゴを不適切な素材で作ったり模様化するのは不可。

5・トップスの背中側は白だけとする。

6・ボトムは幅1センチ以下の外側の縫い目以外は白だけとする。

7・帽子、ヘッドバンド、バンダナ、リストバンド、靴下は1センチ幅のトリム以外は白だけとする。

8・シューズは、底も含めてほぼ全体白とする。大きなブランドロゴは奨励しない。グラスコートシューズの規定はグランドスラムルールに同じ。つま先周りにピンプルのあるシューズは不可。つま先のフォクシングはスムースであること。

9・プレイ中に見えるまたは見えるかもしれない下着は幅1センチ以下のトリム以外は白であること。汗により見える場合も含まれる。さらに、常識的な品性をいつも保つこと。

10・どうしても必要な場合を除いて医療用のサポート品も白を身に付けること

ウィンブルドンの選手のウェアが白い理由

ウィンブルドンのテニス大会は、「社交」の場で行われるスポーツとして始まった。テニスはお上品で観戦が楽しいスポーツだった。

ところが、テニスの技術が向上するにつれ、動きも大きく多くなって行き、見過ごすことのできない問題が生じることとなった。
「汗」である。
「汗」は、イギリスの社交場には全くそぐわないものと考えられた。よってウェアに現れる「汗滲み」は「たいへん見苦しいもの」と考えられた。
特に女性選手にとってはなおさらであった。

当時は、女性が汗をかいているところそのものが、決して他人に見られてはならないことであったという。まして「汗滲み」などとうてい社交場には「不適切」な「恥ずべきもの」と考えられたのである。
「汗滲み」は選手たちを悩ませる難問となった。
この難問をスッキリと解決したのが「白いウェア」である。
白い布は、ほかのどの色よりも汗滲みが目立たないのだ。
こうして、選手たちは、「白」の着用を選ぶこととなった。

白い服を着ることで、見苦しいものを目に入れることなく、社交場の皆がテニスを楽しめるようになった。
白いテニスウェアは、いわばウィンブルドン流「おもてなし」の心が産んだ誇るべき知恵であったのである

ウィンブルドンはなぜ白に徹底的にこだわるのか

しかしなぜ、布地の開発が進む現在においても、白にこだわるのか。
汗滲みが目立たないのなら、白じゃなくてもよいのではないだろうか。
「ウィンブルドンの白は、ただの色ではなく理想なのだ」

白は、イギリスでは夏の色、平和なのんきさを象徴する色、穢れなきものの色、信念を表す色、希望と神秘の色、答えを語らない色。白い服は汗以外にも様々な汚れを吸い取り滲みにして数回洗えばグレーになってしまう服。ほんのひと時だけ白として輝く服。白い服の魅力はこの一瞬の輝きにあるのかもしれない。
ウィンブルドンの白は単なる色ではなくて理想そのものなのだ。・・・・

で、なぜ取り締まるほど白にこだわるのかについての明確な回答は書いてなかったような気がするけれど、これはなんていうか、いわゆる「落書きを消す効果」のようなことなのかと想像した。

ほとんど白といって少しの色を認めた場合、少しが少しずつ増え、やがてはどこかに白が見えればOKにとなり、白規定は有名無実となるのではないか。だから、小さいことを一つずつ潰していこう。大きくなる前に手を打とうという発想かと。

なぜならこれは伝統だから。真っ白いテニスウェア姿の選手は誇るべき伝統の理想の姿であるから。伝統は守り理想を追求して何かいけないのか。そこにきっと言葉にできる理由はない。
そして、伝統は威光を演出する。

ウィンブルドンはまちがいなく威光の獲得に成功している。威光は、いろんな方面にとても便利なツールだ。

たとえばイベントとしての価値。
ウィンブルドンは私設の小さなテニスクラブが主催しているのに、テニスの世界で首位を争う賞金を提供している世界屈指のイベントである。また、グランドスラム中最も黒字のイベントである。
これはウィンブルドンは威光のおかげではないのか。

ウィンブルドンでは、スポンサーの広告表示をしなくても、潤沢なスポンサーにサポートされている。
ウィンブルドンのスタッフはボランティアが多く、賃金を支払われているスタッフもごく普通の給料を支払われているだけだという。
ウィンブルドンで働くという誇りでスタッフは満たされているのだ。
社会的にもウィンブルドンでの仕事経験は高く評価されるものであるという。これらはウィンブルドンの頑な白規制も一役買っているに違いない。

よほど人権を無視するものでない限り、いろんな価値が認められる世の中となっている今、理由など求めなくても、そのやりすぎとも思えるこだわりの存在はユニークな価値あるものとして楽しむべきものなのかもしれない

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