人間の体は年齢とともに老化をしていきます。
これは避けられない事実ですが、美容に気を付けている女性の方にとっては、肌などの老化の悩みは大きいのではないのでしょうか。

そんな老化してしまう肌には、アミノ酸を摂取することが効果的だと言われています。美容に良いとされているコラーゲンも、実は多くのアミノ酸で構成されているのです。

ここでは、美容とアミノ酸の関係をご紹介していきましょう。

美肌に欠かせないアミノ酸

シミやしわが少なくて潤いと弾力のある若々しい肌、美肌は女性にとって永遠のテーマと言われていますね。現代では、女性だけには限らず、男性も美しく健康な肌を保ちたいと考えている方も多くなりましたね。

美白のための化粧品は、多くの女性たちにとっては、夏の必需品になっています。化粧品などで美容を保ちたいと考えている方もいれば、アトピー性皮膚炎などによる、皮膚の異常なかゆみや荒れは、肌の疾病を患っている方にとって、とても切実な悩みであり、肌については人それぞれ悩みや不満などもあることかと思います。

「肌」というと「顔」と真っ先に考えがちですが、、皮膚は人間の体の全体を覆っていて、体の中から勝手に水分が蒸発してしまうのを防いでおり、肌の大きな役割は、外界の異物に対するバリアとしての機能なのです。どんなに清潔にしていても、私たちが日常生活上で、雑菌などとの接触を免れることは決してできません。物質や空気中にも必ず菌はあるのです。目に見えない埃とともに、空中にも菌が浮遊していますし、手にしたものの多くに雑菌がついている可能性があると考えて良いのです。この菌などについては、よく肥えた土壌では、1g中に約数十億個の菌が生息していると言われています。人間の体の中に、これらの雑菌などの異物が侵入してしまった場合には、体内の免疫細胞や、抗体による免疫反応が働いて、体の中ではその菌の無毒化や除去をしてくれているのです。体内に雑菌や異物を侵入させないことがまず重要な役割りで、肌はその目的に適した巧妙な構造で働いているのです。

身体を守るバリア角質層

人間の皮膚の一番外側の角質層と言われているところは、ケラチンというタンパク質を主な成分としているとても大切な細胞の一部です。これは、健康な肌や体を守ったり、保持したりできるように体の中で働いているのです。
角質層では、ケラチンを充満させるために細胞核も消失して、さらに細胞内の水分もほとんどなくなった、タンパク質のかたまりでできた扁平な敷石のような構造物なのです。

しかし、わずか0.01~0.02mmの厚さしかないこの角質層が、私たち人間の身体の、一番外側で異物などの侵入を防いでくれている働きをしているのです。

角質層が防御機能を発揮するのは、ケラチンの力が大きく関係していると言われています。このケラチンは水に溶けることはありません。ケラチンは、分子同士がお互いに強く結びつき、全体的に隙間の少ない、緻密で固い構造になっています。このようなケラチンの特徴は、ケラチンに含まれるアミノ酸や、システインの性質によるものからです。

アミノ酸の中でもシステインというものは、硫黄を含む特殊なアミノ酸であり、別のシステインの「S」と手をつないで「S-S」という形で、強く結合する性質を持っています。この強い結合力こそが、人間の皮膚の角質に適した、ケラチンの性質の基礎になるものなのです。

肌のやわらかさはコラーゲンから

角質を含む表皮が、バリアの主体とすると、その下にある真皮層は、表皮を支えて皮膚に弾力を持たせるクッションの役割りを果たしています。また、真皮層には毛包や汗腺、皮脂腺が固定されています。

真皮の弾力性は、人間の持つ肌の美しさに最も深い関係があると言われています。女性の悩みのひとつでもあるシワは、表皮の変化よりも、真皮層の弾力の低下や、収縮などによる原因が大きいと言われているのです。

この真皮層の弾力は、タンパク質の一種であるコラーゲンとエラスチンの特性によるものです。皮膚の水分以外の重量の70%をコラーゲンが占めているのです。

私たち人間の体を構成している、全タンパク質の約30%がコラーゲンで、皮膚のコラーゲンはその主なものなのです。コラーゲンには、アミノ酸組成の上で見ると、他のタンパク質と大きく違う特徴があります。

タンパク質を構成しているアミノ酸は20種類もあるのに、コラーゲンを構成しているアミノ酸のうち3分の1はグリシン、9分の2がプロリンです。つまり、コラーゲンの半分以上はグリシンとプロリンでできているのです。また、コラーゲンを構成しているプロリンのうちの半数は、コラーゲン分子が作られていく途中で、酵素の作用を受けてヒドロキシプロリンというアミノ酸に変換されています。ヒドロキシプロリンは、コラーゲン特有のアミノ酸なので、コラーゲンの性質に関係していると考えられています。ヒドロキシプロリンは、ゼラチン質の多い食品に含まれますが、体内に吸収されたヒドロキシプロリンが、そのままコラーゲン分子中のヒドロキシプロリンとして組み込まれることはないようです。しかし、無駄になってしまうのではなく、ヒドロキシプロリンは体内で代謝を受けて、別のアミノ酸であるアラニンとグリシンに変わりますので、結局はコラーゲンなどタンパク質の合成に使われているのです。

コラーゲンは、ケラチンのように大きな集合体をつくっていますが、ケラチンとは分子の集まり方が違っていて、水分子を多く抱え込むことのできる構造をつくります。皮膚の弾力性は、主に真皮中の主要タンパク成分である、集合したコラーゲン分子の適度な結合力と、保水性によりますが、コラーゲンに比べると1%程度の割合でしか、真皮中に含まれないエラスチンもまた、皮膚の弾力性に大きく貢献しているタンパク質と言えます。

表皮層では角質を供給するために、基底細胞が大いに働いて分裂を繰り返しているのに対して、真皮層では、実はあまり細胞分裂が起こっていないのです。細胞は存在していますが、表皮の細胞とは全く別の細胞なのです。これらの細胞は、細長い形態の特徴から、繊維芽細胞と言われています。真皮を埋めるコラーゲンに囲まれて、窮屈そうに散らばっているこれらの細胞が、真皮の保っていくのに欠かせない主役といえる細胞です。なぜなら、その真皮の線維芽細胞こそが、真皮のコラーゲンを合成している細胞だからなのです。

コラーゲンも老化する

真皮中の線維芽細胞が、コラーゲンの合成や分解を常に行って、真皮をしっかり保つために努めているのですが、コラーゲン分子の代謝の回転はそれほど速くはなく、古いコラーゲンを完全に新しいコラーゲンに置き換えるには、少し時間がかかると言えます。また、真皮繊維芽細胞のコラーゲン分子の損傷が蓄えられていきます。コラーゲンは比較的に安定しているタンパク質ですが、長期的には様々な反応をしてしまうこともあるのです。

例えば、コラーゲン中のアミノ酸が糖と反応してしまうと、メイラード反応という反応が起こってしまい、コラーゲンと糖が結合した物質ができてしまうのです。また、表皮を通過した紫外線がコラーゲンに作用すると、コラーゲン分子のアミノ酸が、他のコラーゲン分子のアミノ酸と強固な結合を作ってしまいます。このような結合反応を架橋形成反応といいますが、コラーゲン分子のアミノ酸の間で生じる架橋には様々なものが知られています。

架橋が蓄積してしまうと固くなってしまい、肌の柔軟性が失われていくことにもなりますし、コラーゲンを分解する酵素の作用も受けがたくなって、ますます真皮に残ってしまい架橋の数を増やしていくことになりかねないのです。真皮全体の代謝活性は、人間の加齢とともに低下していきますが、バランス的にはコラーゲンを合成するより、分解する方が強くなっていくのです。そのため、真皮中のコラーゲン量は減ることになり、皮膚が薄くなっていくのです。これが、人間の肌の柔らかさやハリが衰えてくる現象なのです。

現代では、シワを減らす効果が立証されいて、医薬品にもなっているのは、レチノイン酸の塗り薬だけです。レチノイン酸はビタミンAの類緑物質で、薬理的な活性はビタミンAよりも強い物質なのです。レチノイン酸には、真皮線維芽細胞のコラーゲン分泌を促進する作用があります。ですから、これによって真皮中の新しいコラーゲン量が増大して、皮膚の状態が改善していくと考えられています。しかし、大きなシワには効果があまり期待できないようです。残念ながら、日本では副作用についての懸念が排除されていないため、承認されていないのが現状です。

レチノイン酸が、皮膚の外からコラーゲンを増大する効果を発揮するとすれば、皮膚の外側から、直接コラーゲンを与えてやればよいのではないかと考えますよね。極端な方法としては、コラーゲンを、シワの部分に注入する方法があり、美容整形で実用化されています。この注入を行った方を見てみても確かに効果があるようです。では、コラーゲンを注入するのではなく、皮膚に直接塗った場合はどうなんでしょうか。残念ながら、コラーゲン分子は表皮を通過できないので、コラーゲンを皮膚の外側からいくら塗ってみても、コラーゲンを供給することはできると言えないのです。

化粧品にコラーゲンが使用されているのは、コラーゲンとが持つ保湿作用があるからで、皮膚の表皮の水分を保つためには有効だと言えます。コラーゲンと同じく、最近化粧品に配合されることの多い、ヒアルロン酸についても同様なことと言えるでしょう。

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中山葵

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