ラパーマ

●ラパーマの歴史

近年の猫の新種登録は人為的に交配されたハイブリッド・ミックスであることが多いのですが、ラパーマの場合は突然変異により生まれた新しい品種の猫でした。
1982年、米国オレゴン州の農家コール家では、倉庫の作物をねずみなど害獣から守るためにスピーディという名前のブラウンタビーの猫を飼育していました。ある時、このスピーディが産んだ6頭の子猫の中に、ほとんど毛のない子猫がいることを見つけました。幸いなことに成長するにしたがってこの無毛の子猫には毛が生えそろいます。その毛が、全身に渡ってカールしていたのです。そこで、コール夫妻はこのメスの子猫にカーリーと名付けました。
カーリーは兄弟や親猫たちとともに、コール家のワーキング・キャットとして働きました。
やがてカーリーも子猫を生みましたが、その子猫たちのうち5頭が、カーリーと同じように毛がありませんでした。この当時はすでにほかの猫種で毛がカールしたものがあったことや、コール夫妻に猫の繁殖についての関心があまりなかったことから、当初はあまり重大なことと思わなかったのでしょう。カーリーとその子猫たちは育種目的ではなく交配を重ね、長短そしていろいろな毛色の巻き毛の猫たちが生まれていきました。
巻き毛の猫たちはやがて評判となり、近隣のブリーダーなどからも関心を持たれました。そして、勧めに従ってキャットショーに出展したところ、高い関心を集めました。そしてコール夫妻は、ブリーダーたちの協力を得て、カーリーの子どもたちを新しい猫種として育種しようと決めたのでした。
調べてみるとさらにおもしろいことに、カーリーと子猫たちは、それまで知られていたアメリカン・カールなどの猫とは遺伝子的に血縁がなく、また、突然変異で引き起こされた優性遺伝であることがわかりました。
コール家に協力し、自らも育種に乗り出したブリーダーたちは、カーリーの血を引く猫たちを洗練しようと、ほかの純血猫を交配させることにしました。オシキャットやバーミーズ、シャム(サイアミーズ)などです。
そして1997年にはラパーマの愛好家団体が設立され、2003年にはTICA、2008年にはCFAとアメリカの二大登録団体に新種として登録されることになったのです。さらに2014年には国際的な猫の団体であるFIFeからも新しい猫種として認められました。


●ラパーマの飼い方

ラパーマはネズミなどを捕るワーキング・キャットであった祖先の血を引く、大変活発な猫種です。運動ができるスペースを十分に用意しないと、家具を駆け上り飛び降りて一緒にいろいろな物を落とすことになってしまいます。しっかりしたキャットタワーを用意し、おもちゃなどで遊んであげましょう。
人間のひざの上でリラックスすることも好きですが、あくまでもラパーマが遊びに飽きてからのことです。
家族が大好きで、人の指示をよく聞きますのでしつけはしやすいでしょう。
子どもやほかの猫、ペットとも仲良くできます。
留守番もできますが、あまり退屈するといたずらをしてしまうかも知れません。
独特の巻き毛は、強いブラッシングやコーミングで伸びて巻きがゆるくなってしまいます。一度に長時間の手入れをするよりは、短時間の手入れを週に何度か行うのが良いでしょう。


●ラパーマの毛色

チョコレート、シルバー、ライラック、タビー、シールポイント他あらゆる毛色があります。


●ラパーマの気を付けたい病気

長毛猫におこりやすい疾患として毛球症がありますが、ラパーマは毛がカールしているためセミロングほどの長さの個体でもでもかかりやすくなります。大きくなると排出困難になりますので、吐き出すための猫草を用意したり、除去剤を定期的に病院からもらっておいたりと工夫しましょう。
ラパーマは成猫になってから毛が薄くなるという場合があります。発毛や脱毛はホルモンの影響が強く、去勢やホルモン剤の投薬で改善する場合がありますので、ひどく気になる場合は動物病院で相談しましょう。
また、ラパーマは猫風邪への感受性が強い猫として知られています。猫風邪とは、ウィルスや細菌、カビなどさまざまな原因で起こる感冒様の症状ですが、なかでも猫ウイルス性呼吸器感染症と猫カリシウイルス感染症は重症化しやすく、命にかかわることもあります。ワクチン接種を定期的に行い、予防に努めることが大切です。
元来、活動的なラパーマは、運動不足だと肥満になってしまいます。
高齢になって活動量が少なくなってきたら、食事の量にも工夫が必要でしょう。

エジプシャンマウ

●エジプシャンマウの歴史

エジプシャンマウは、古代エジプトの壁画や美術品に描かれた古い種類の猫と伝えられていますが、定かではありません。
近代になって小さな頭とすらりとした体型、独特の模様がよく似た猫がエジプトで発見され、ヨーロッパに持ち込まれて繁殖された後、アメリカにわたって固定化されたと伝えられています。
エジプシャンマウをイタリアで繁殖し、アメリカに持ち込んだとされるのは、ナタリヤ・トルベツコイと名乗る人物です。1897年に生まれたロシア王女と伝えられていますが、史実においてその人物の存在ははっきりしていません。ただ1つ言えることは、エジプシャンマウの魅力を見初めてヨーロッパで繁殖した後、自らアメリカに持ち込んで猫種として確立し、キャットショーに出陳するほどこの猫を愛したのもまた同じ人物であったということです。
その女性が王女であろうとなかろうと、アメリカに持ち込まれて洗練されたエジプシャンマウたちは、1965年に世界中の猫血統登録管理団体に公認され、多くの猫愛好家の心をつかんできたことはまぎれもない事実です。
晴れて新品種として公認を得たエジプシャンマウでしたが、数少ない基礎猫を土台に繁殖していたため、人気の高まりと共に近親交配により遺伝疾患に苦しむようになりました。
そこで、アメリカの繁殖家ジーン・ミルウッドは、遺伝子プールを広げるための交雑にふさわしい相手を探し、インドのニューデリー動物園にいたネコたちの血統を導入することにしました。おそらくはベンガルのヤマネコの血を引くと思われた猫たちを交配し、数代を作出した後に、この異種交配はTICAに公認されることとなりました。アメリカの大きな猫血統登録団体であるCFAは、いったんこの交雑を認めはしたものの、1980年代に入ると方針を変え、エジプト土着の猫を交雑に使うべきと改めました。そこで、繁殖家キャシー・ローワンは、エジプトから13頭のマウたちを輸入し、遺伝子の多様化をはかり、健全なエジプシャンマウの作出に大きな力となりました。
なお、近年の遺伝子解析による研究では、エジプシャンマウの祖先はエジプト原産の猫ではなく、メインクーン、コラット、ターキッシュアンゴラと近縁である可能性が指摘されています。
また、アビシニアンやシャムとの交雑でエジプシャンマウに似た猫を作出する試みがありましたが、これは不成功に終わりました。この時生まれたタビーの猫は、後年、オシキャット作出の基礎となりました。


●エジプシャンマウの飼い方

エジプシャンマウは家族が大好きで、賢く、しつけやすい猫です。愛好家のあいだでは、教えれば投げたボールを取って来るようになる、犬のようにリードをつけて散歩ができるとも言われています。運動とコミュニケーションを兼ねて、いろいろと遊びを教えてあげましょう。
高い所に上るのも大好きですので、キャットタワーを用意してあげましょう。
短毛ですので、被毛の手入れは簡単です。定期的にブラッシングやコーミングをしてあげましょう。


●エジプシャンマウの毛色

エジプシャンマウはシルバー、スモーク、ブロンズの毛色があり、公認されていない色としてブラックとブルーがあります。
スポテッドタビーはエジプシャンマウ独特のタビーで、地肌までこのスポットで染まっています。


●エジプシャンマウの気を付けたい病気

エジプシャンマウはもともと自然発生種であり、品種育成期間に何度かの交雑を経て遺伝性疾患の少ない丈夫な猫になりました。
平均寿命は10~15歳とされていますので、10歳前後からシニアになります。
一般的に猫は、中年齢以上になると膀胱炎や尿結石になりやすく、シニアになると腎不全になることが少なくありません。
いずれの場合も多飲多尿がサインです。また、膀胱炎や尿結石では尿に血が混ざって色が濃くなることがありますので、日頃からよく観察してあげましょう。
繊細な面のあるエジプシャンマウは、騒々しい環境や来客が苦手で、時にストレス症状を見せることがあります。
近所で工事が始まった、親せきや友人が滞在しているなどで体調に変化をきたすことがあります。

サバンナキャット

●サバンナの歴史

サバンナは、野生の猫科動物であるサーバルキャットとイエネコによって作られた猫種です。人為的な繁殖によるものでは、アフリカン・サーバルのオスとイエネコのメスの交配により1986年4月7日に生まれた子猫たちが、記録上最初のサバンナとなります。繁殖者のジュディ・フランクはサーバルとサイアミーズを交配させ、生まれた第1世代(F1)はサーバルとイエネコの両方の特長を備えていました。
このニュースは話題にはなりましたが、現実の問題として気性の荒い野生のサーバルをイエネコとの交配が可能なまでに飼い慣らすことは、手間も時間もかかり時に危険を伴う難しいものです。サーバルには保護条例や飼育規制があるため、基礎となる個体を入手することも簡単ではありません。そのため、野生の血が流れるこの美しい猫を繁殖しようとするブリーダーはなかなか現れませんでした。
サバンナの拡大に奔走したのは、この新しいハイブリッドに惚れ込んだアメリカ人パトリック・ケリーでした。ケリーはフランクからサバンナを譲り受けた繁殖家たちを説得して、第2世代(F2)以降の交配と育種を勧めました。これに加わった繁殖家ジョイス・スルーフにより、サバンナの本格的な育種がスタートし、第3世代、第4世代と進んでいきました。
F1サバンナの誕生から10年後の1996年、ケリーとスルーフによりサバンナのスタンダード(猫種標準書)が書かれましたが、希少な野生動物の血をイエネコに入れること、それをペットにすることについての倫理的な問題で物議を醸します。猫科の野生種の遺伝子を入れることは、イエネコの遺伝子プールを広げることにもなります。一方で、異種交配による免疫疾患の出現や希少種の乱獲につながるとの懸念などがテーマとなり、多くの話し合いがもたれました。
結局、新しい猫種としてTICAに登録されることになったのは2001年、キャットショーに正式に出場可能になったのは2012年になってからのことでした。
サーバルとの交配には、独特の毛の模様が現れるようにと、ベンガルやエジプシャンマウ、オシキャットなどが使われることが多いようです。また、サバンナの第1世代のF1から第4世代のF4までは、サーバルキャットの遺伝子が占める割合が計算上50%を超える個体が現れるため、イエネコではなく特定動物として届け出を行い、飼育規制を守る必要があります。


●サバンナの飼い方

サバンナは体力があり、大変賢い猫です。特に若い頃の運動量は普通の猫を超えますので、飼育前に十分な準備が必要です。キャットタワーは足場のしっかりした物を用意し、家の中を走り回ってもトラブルにならないようにしておきましょう。運動不足ではストレスからトラブルを起こす可能性があります。
サーバルの割合が濃いものは特定動物として行政への届け出が必要ですが、ルールに従って専用のケージを用意し、家から出すことは原則として認められません。逸走には十分注意し、戸締りや人の出入りに気を配る必要があります。頭が良く洞察力があるため、簡単なカギでは開けられてしまう可能性もあります。
依存心と自立心のバランスが良く、留守番も可能です。ただし、大人の目が行き届かない状況で、小さな子どもや小動物と過ごさせない方が安全です。犬との相性は悪くありませんが、ウサギやげっ歯類、小鳥はハンティングの対象となってしまう可能性があります。
サバンナは犬のように賢く、コミュニケーションが取りやすいため、トイレのしつけは十分可能です。
また、水が好きな個体も多いため、水のたまっている風呂や洗濯機などはきちんとふたをしておきましょう。
短毛のため毛の手入れは楽です。定期的にコーミングやブラッシングをしてあげましょう。


●サバンナの毛色

交配相手の猫によりいろいろな毛色が生まれる可能性はありますが、公認されているのはブラウンとシルバーのスポッテッドタビーとブラック、ブラックスモークです。ブラウンの毛色には幅があり、ゴールドに近いものからベージュのような色の場合もあります。


●サバンナの気を付けたい病気

サバンナは自然種のサーバルを基礎にしているため、基本的には健康的な猫です。
しかし、イエネコと大きなサーバルキャットの組み合わせであり、同科異種交配でもあります。この場合、血液などの免疫疾患が起きてしまう場合や、臓器の大きさが体と合わない(大きな体に小さな臓器で負担が増してしまう)ケースが起きることが知られています。
健康には未知の部分も多いため、定期的な健康診断を行うようにしましょう。
また、猫一般に多い心筋症や、下部尿路疾患にも注意が必要です。

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