シャム(サイアミーズ)

●シャム(サイアミーズ)の歴史

18世紀、タイでは「Tamra Maew」という名前の猫の詩集が記されました。当時から紀元1300年頃までに遡って存在した23種類の猫たちの詩を集めたもので、幸運をもたらす17頭と不幸を招く6頭について描写されていたとされています。このうち、現存するのはシャムと、コラットやバーミーズの原種ほか合わせて5頭のみ、ほかの猫については絶滅しているようです。
シャムという名前はタイ国の古い国名ですが、これを品種名に当てているのは日本だけで、海外ではサイアミーズ(Siamese)と呼ばれています。日本には明治の中ごろに初めて輸入され100年にもなり、純血猫の代表的な猫種としてよく知られています。
タイから西欧にシャムが紹介されたのは、日本に入るよりさらに30年ほど早く、記録上では1878年、タイの首都バンコクに赴任していたアメリカ領事から当時のアメリカ大統領ヘイズに贈られたものが最初とされています。
さらに1884年には、バンコクに赴任していたイギリスの役人が帰国する際に入手し、翌1885年、本国イギリスで出陳されました。この時のシャムはブルーポイントの毛色だったと伝えられていますが、濃いポイントにサファイヤブルーの透き通った瞳の魅力的な姿は、愛猫家の間で大変な人気を博しました。イギリスでは繁殖も始まり、海外へと輸出されるようになりました。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、第一次・第二次世界大戦の時代になると、食糧難や生活の不安定のため、絶滅の危機に瀕してしまいました。すでに世界中に広がって飼育されていたシャムでしたが、ペルシャなどほかの猫種へ人気が移っていたことも減少に拍車をかけたようです。
戦後、著しく個体数が少なくなったシャムを復活させるために、交雑が行われた時期がありました。この時の交雑でシャムは大きく分けて2つのタイプに分かれることになりました。
あくまでも”ほかの猫種に比べて”V字型の頭と細身の体というプロポーションのシャムでしたが、交雑によりソリッドな容姿がより一層、強調されるようになったのです。このタイプのシャムをモダンスタイルと呼び、交雑前のやや丸いスタイルに近いものはトラッドスタイルまたはオールドスタイルと呼ばれています。
キャットショーではモダンスタイルばかりが評価される時代が続いていましたが、この偏りに危機感を感じた繁殖家たちがいました。そして1980年頃からドイツやイギリスを中心に、伝統的なスタイルの保存が必要という視点から、トラッドスタイルのシャムについても育種が続けていました。熱意ある繁殖家の努力により、オールドスタイルのシャムは「タイ」という新しい名前で、2009年にTICAに登録されることになりました。


●シャム(サイアミーズ)の飼い方

若猫から中年齢くらいまでは大変活発でよく動き、走ります。ハンティングも高い所に上るのも大好きです。
のぼれる高い所がなければカーテンに爪をかけて駆けのぼってしまい、カーテンレールの上で部屋を見下ろして休んだり、降りられなくなって騒いだりするなどという飼い主さんの声も聞かれます。
キャットタワーを用意してあげることと、よく遊んであげることが大切です。
賢くしつけやすい面があり、犬のようにリードをつけて散歩をしたり、ボールを投げると取って来る、名前を呼べばやってくるという面はありますが、気まぐれな性格もあるため、気分が乗らなければ言うことを聞かないこともあります。
繊細さからのわがままですので、しつけは根気よく決して暴力的にならないように、しかし機嫌を取りすぎるのもよくありません。素っ気なくしていればシャムの方から寄ってくることが多くありますので、上手に付き合いながら家庭生活を教えていきましょう。
さびしがりやなので犬などほかのペットや猫とも基本的にはうまく行きます。しかし、シャムはいつでも自分が1番の猫です。
短毛ですので被毛の手入れは楽ですが、日本の気候では秋冬は寒がることがあります。
声が太く大きく、個体差がありますが発情期のオスは大変よく鳴き、うるさいほどの場合もあります。早めに去勢を検討するのが良いかもしれません。


●シャム(サイアミーズ)の毛色

シャムはポイントのあることが条件になり、代表的なブルー、シール、ライラック、チョコレートに加えて、レッドやトーティなどもいます。
ほとんどの色が認められていますが、白い毛色は認められません。
ほぼ真っ白の体で生まれてきますが、成長に従ってポイントが出てきます。
また、成猫になるまでに、尻尾の先などのポイント部分に一時的にタビーが現れることがあります。


●シャム(サイアミーズ)の気を付けたい病気

遺伝性疾患の素因が非常に多いシャムですが、反面、平均寿命が12~15歳と長いことでも知られています。
短期間で致命的な疾患になることは多くないようですが、一生付き合っていかなくてはいけない病気が見られるようです。
シャムでしばしば現れるのは内斜視で、黒目にあたる部分が顔の内側に寄ってしまっています。
視覚障害を伴うため、物が見えずらく、遊んでいても狙った地点に飛び移れなかったり、物にぶつかったりするということがしばしば見受けられます。不安から一層、飼い主を頼る傾向もあるようです。
また、シャムはぜんそくにかかりやすい傾向があるようです。ぜいぜいと苦しそうに呼吸していたり、咳が多く出るようでしたら、早めに動物病院を受診しましょう。

トイガー

●トイガーの歴史

トイガーは1980年代から育種が始まった、新しい猫種です。米国・カリフォルニア州でベンガルの繁殖をしていたジュディ・サジェンは、2頭の子猫の中に、サーキュラーマーキングと呼ばれる環状の縞があることに気づきました。このマーキングは野生の虎の持つ縞パターンであることから、ジュディはこの子猫たちの育種によって、「リビングで飼えるトラ(猫)」を作ろうと考え、繁殖家仲間のアンソニー・ハッチャーソンとアリス・マッキーの協力により本格的な育種に乗り出しました。
トイガーという名前は、「Toy(おもちゃ、可愛がる)」「 Tiger(虎)」の2つの単語による合成語です。
1993年には、アメリカの二大猫登録団体の1つ、TICAが新品種登録のため予備登録を行い、2000年には育成期間として受け入れ、2006年には正式に猫種として認められました。
しかし、もう1つの大きな猫登録団体であるCFAは、野生ネコの血統を繁殖に用いることを禁じているため、ベンガル同様トイガーも登録を認めていません。
TICAで新種登録されたものの、トイガーの柄パターンや毛色はまだ安定せず、ベンガルに近いスポットが多い個体や、従来のタビーに近いもの、育種に使われたほかの猫の影響で地色がブルーやシルバーに近くなってしまうものもあります。
より虎に似た猫となるようブリーダーによる育種が続いていますが、もっと虎らしくなるためには、まだ10年くらいはかかると言われています。


●トイガーの飼い方

トイガーは、野生の猫の血を引くベンガルを基礎とする新しい品種だけに、まだまだ心身ともに野性味の強い個体が少なくありません。個体差も大きいので、初めて猫を飼う人には少々難しい面があります。
行動は大変活発で、生活環境には十分なスペースを割いてやる必要があります。また、体の大きい子も多いようですので、キャットタワーはしっかりとしたものを用意してあげてください。
好奇心が強く、洞察力があり、人間とのコミュニケーションがしやすい面では犬のような性質があります。しかし、警戒心も強いため、家族以外には距離を置いて接したり、来訪者に対しては身を隠すこともあるようです。
また、力の強い猫ですので、抵抗されると人間側のケガが大きくなることがあります。子猫の頃から首輪やリード、輸送用クレートに慣らしておくことで、通院や外出の際はぐんと楽になります。これらの用具に不快感を持たないように習慣づけ、動機づけを行うことが大切です。
ショートヘアですが密生したコートで、やや大柄でもあるため、抜け毛もそれなりにあります。定期的にブラッシングをしてあげましょう。


●トイガーの毛色

ブラウンタビー(マッカレル)のみとなりますが、地色はブラウン、マホガニーレッド、オレンジ、ゴールド、タンまで幅があります。縞模様は黒くはっきりしているほどよいとされています。
顔まわりの毛色は、目のまわりには黒く縁どられた「マスカラ」と呼ばれるパターンが入り、頭部にホワイトがあることが理想です。
おなかや腕の内側などは本当のトラに似せて白が入るように、現在も育種が続けられています。
なお、地色はブラウン系だけでなく、ブルー系の毛色が現れることがあります。公認の毛色として認められてはいないものの、トイガーのように品種として固定する途上の猫では避けられない現象です。毛色や柄は理想通りに現れないこともありますが、家族に迎えたら最後まで大切にしてあげてください。


●トイガーの気を付けたい病気

トイガーはベンガルを基礎に作られた新しい品種の猫なので、起こりやすい病気や遺伝性疾患もベンガルから引き継がれたものがあります。
特にベンガルは、ヤマネコから受け継いだ性質で猫伝染性腹膜炎(FIP)への感受性が高く、罹患すると重症化するケースが多いという報告があります。FIPそのものは遺伝性疾患ではありませんが、治療が間に合わず亡くなる場合もあるため、トイガーの作出者も注意を呼びかけています。
また、肥大型心筋症の起きる可能性もあるとされています。
健康なトイガーは10年以上の寿命を保った子も少なくなく、すべてのトイガーに遺伝性疾患のリスクがあるわけではありません。
新しい猫種だけにこれから出てくる疾患もあると考えて、健康管理は十分に行ってあげましょう。

トンキニーズ

●トンキニーズの歴史

トンキニーズはシャムとバーミーズのハイブリッド種ですが、やや込み入った歴史があります。
そもそもバーミーズ自体がシャムの異種交配から生まれた猫種であり、これに「戻し交配」という繁殖技術が加わって、わかりにくい成立になってしまいました。
トンキニーズの成立を解説するためには、その親猫と兄弟猫から説明しなくてはいけません。
1930年、アメリカの軍人であり、猫愛好家であり、繁殖を研究していたトンプソン氏が、ミャンマーからアメリカに1頭の猫を持ち帰りました。この猫は、美しいチョコレート色の被毛を持つメス猫でした。ウォン・マウと名付けられた彼女は、自らの産んだ子猫により、トンプソン氏と共に猫種の歴史に名を残すことになりました。
トンプソン氏は最初に、ウォン・マウをシャムと交配させました。ウォン・マウにはシャムの血が入っているとされていましたので、これは1回目の戻し交配にあたります。
さらにトンプソン氏は、ここで生まれた子猫を、母猫のウォン・マウと交配させました。これは2回目の戻し交配ですが、この時に生まれた子猫は3つのタイプになりました。
1つは祖父猫と同じシャムの特徴が強いポイントがあるもの。
2つ目は全体が濃いブラウン単色のもので、この猫はその後、バーミーズとして育種されることになりました。
そして3つ目のタイプは母猫であるウォン・マウと同様に、美しい茶色い被毛にさらに濃いポイントを持っていました。母猫ウォン・マウとこの子猫こそが、最初のトンキニーズとなったのです。
バーミーズとトンキニーズはシャムを媒介にした、いわば兄弟猫でありいとこ猫でもあったのです。
バーミーズはその後の繁殖計画と選択交配により、基礎猫のシャムとは異なる特徴が際立ち、新しい猫種として公認を得ることになりました。
一方トンキニーズは、当初はウォン・マウとその子猫のように美しいチョコレートブラウンにポイントの毛色や、さらにその子世代ではゴールデンシャムと呼ばれるほど美しい毛色が際立っていましたが、交配で世代が進むにつれ毛色は淡色化して特徴を失い始めました。猫の血統登録団体は近親交配への懸念から、新しい猫種としてトンキニーズの公認を見送るようになりました。そこでトンキニーズを愛好する繁殖家たちはトンキニーズ協会を設立し、独自のスタンダードが制定しました。そして、遺伝性疾患の多いシャムとバーミーズから健康な個体を選んで選択繁殖を続け、トンキニーズを確立しました。
こうした努力の結果、1974年にカナダで初の新猫種登録を受けると、以降はアメリカやヨーロッパでも公認されるようになりました。


●トンキニーズの飼い方

トンキニーズは非常に遊び好きで好奇心が強いため、外へ出てしまうと帰ってこられなくなる可能性が高い猫です。
反面、犬のような賢さがありしつけがしやすく、呼び戻しができたり、投げたボールを持って来たり、リードをつけて散歩ができたりもします。
コミュニケーションを喜ぶ猫ですので、積極的にしつけを行いましょう。
室内飼育であっても、強すぎる好奇心が時に事故を誘発します。蛇口や洗濯機、時にトイレから流れる水はトンキニーズにとって興味の対象です。特に体の小さいうちは、水の中への転落事故防止に気を配ってあげましょう。
トンキニーズは短毛ですので被毛の手入れは難しくありません。定期的にコーミングやブラッシングを行ってあげましょう。


●トンキニーズの毛色

トンキニーズはポイントを含む固有のコートパターンと、チョコレート、ライラック、ブルーグレー、シャンパンなどの毛色があります。
ホワイトは認められません。


●トンキニーズの気を付けたい病気

遺伝性疾患の非常に多いシャムとバーミーズを基礎猫に持つため、トンキニーズの繁殖家たちは当初から慎重な交配を行い、遺伝性疾患を排除してきました。
近縁である3つの猫種の中でもっとも遺伝性疾患が少ないのがトンキニーズです。
平均寿命も比較的長く、12~16歳と言われているトンキニーズですが、一般的に猫は7歳を過ぎると中年になります。さらに10歳を過ぎるとシニア猫になり、尿結石や腎不全、心臓疾患や関節炎など加齢に伴ってどんな猫でもかかりやすい疾患が増えてきます。
尿結石や腎不全は多飲多尿が1つのサインになります。心臓病や関節炎になると、運動量が目に見えて落ちて、じっとしていることが多くなります。
薬やサプリメントで進行を遅らせたり、生活の質を上げることができることがありますので、気が付いたら早めに動物病院を受診しましょう。

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