アドレナリンはホルモンの一種

ホルモンは、「内分泌」という特定の器官や組織に作用を及ぼす化学物質です。

ホルモンは内分泌腺と呼ばれる器官(下垂体、視床下部、甲状腺、卵巣、精巣、すい臓、副腎など)で作られています。

それぞれ違った働きを持つホルモンは、血液中に分泌され全身に送られます。

ごく微量で標的器官(標的細胞 = 受容体をもつ細胞)に作用し、代表的な働きとして次のようなものがあります。

体内環境の維持(恒常性):体温や血糖値など、身体を一定の状態に保つこと
身体の成長:代謝に関与して脳、骨や筋肉などの成長を促す
性の獲得:性の決定や男らしさ・女らしさに影響
生殖、妊娠、出産:生殖活動や妊娠・出産に重要な働き
身体の防御:感染やストレスに対して身体防御や抵抗力として働く
脳の働きのコントロール:神経伝達物質として脳内活動に関わる(別名:脳内ホルモン)

アドレナリンの働き

「副腎」は左右の腎臓の上を覆うようについている臓器です。

内分泌腺の「副腎」には「皮質」と「髄質」とがあります。

アドレナリンはおもに副腎髄質で分泌されます。

一方同族のノルアドレナリンは、おもに神経伝達物質や交感神経から分泌されるほか、副腎髄質からも分泌されます。

両者ともに活発化すると脳や身体を緊張させたり、興奮させたりする働きを持っています。

アドレナリンは心拍数の増加、血糖値の上昇、気管支の拡張などに作用します。

ノルアドレナリンも、ホルモンとして緊急時に末梢の血管を収縮させ、血圧を上昇させるなどの働きをしています。

怖い体験をしたときに、先に作用するのはノルアドレナリンです。

そして、時間が経ってもしばらく心臓のドキドキが止まらない…という状況はアドレナリンの作用によるものです。

このように、いずれも身体の緊急時に対応をしながら、恐怖や怒り、不安や注意、集中、覚醒、鎮痛などに関与していることが分かってきています。

なお、アドレナリンは緊張・興奮系ホルモンの代表格ですが、快楽ホルモンとも呼ばれる「ドーパミン」からノルアドレナリンが生成され、そして、ノルアドレナリンからアドレナリンが生成されています。

つまり「ドーパミン」が、ノルアドレナリンとアドレナリンの前駆体(化学反応の過程である物質が生成される前の段階にある物質)なのです。

アドレナリンとのつきあい方

勉強や仕事、運動をするときなど、適度なストレス状態になるとアドレナリンが分泌され、運動能力を高める、脳を覚醒して集中力を上げる…といった働きをします。

また、この間はエネルギーを大量に消費しますから、脂肪燃焼や代謝も促され体温が上昇するなど、ダイエットや冷え対策にも効果を発揮します。

さらに、危機状況下では脳や身体が認識して「痛み」に鈍くなるような鎮静効果ももたらします。

「火事場の馬鹿力」といわれる思わぬ瞬発力を発揮して、困難な問題を解決することもあります。

しかし、このようなストレス状態が長期にわたり慢性化すると、デメリットも発生します。

たとえば、末端の血行不良、内臓機能低下、代謝の衰え、便秘などの不調です。

また、高血圧や糖尿病が発症するリスクも高まりますし、自律神経のバランスを乱して自律神経失調症にいたる、ということまで指摘されています。

メンタル面においては、アドレナリンの過剰分泌が続くと、怒りっぽくなる、攻撃的になる、キレやすくなるなど感情に作用し、パニック発作につながる可能性もあります。

反対に、アドレナリンの枯渇は、無関心・無気力といった抑うつ状態や、ASD(急性ストレス障害)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)のきっかけになるとも指摘されています。


「過ぎたるは なお 及ばざるがごとし」の格言にあるとおり、ホルモンはまさに「過剰」も「不足」も心身に良いことではありません。

何事もほどほどに…アドレナリンとも上手につきあうことが健康の秘訣といえるでしょう。

ちなみに、アドレナリンは日本の科学者、高峰譲吉と助手が発見して、初めて結晶化に成功しました。

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