圧勝ムード一色で、テレビで競馬を放映しているどのチャンネルのどのコメンターもキタサンブラック推しと、レースが始まる前からキタサンブラック圧勝を予想していました。これは無理もない報道で、大阪杯、天皇賞・春の勝ち方がエグいほど強い勝ち方だっただけに、逃げ馬不在、道悪、相性の悪い阪神競馬場とキタサンブラックにとって悪い条件が揃っていたにしろ、終わってみればオーナー北島三郎さんが万年の笑みで祭りを歌っているのだろうと、競馬ファンは思っていたことと思います。
実際に私もレース前のパドックを観るまでは圧勝を予想していただけに、単勝オッズ1倍代も納得の数字でした。が、パドックの馬体重を観た瞬間に、一瞬にして不安がよぎりました。前走に比べて10kgのプラス。元気であることは証明できる内容でしたが、ベストなパフォーマンスを見せた前走よりも10kgプラスは、5歳となった馬が成長するにしてもちょっと不安な数字でした。そんな中、宝塚記念は発走となりました。

大敗を喫し凱旋門賞回避へ!キタサンブラック

外枠からスタートは好調。圧倒的な逃げ馬が不在となった今回のレースにおいて、どの馬もキタサンブラックを前に出す作戦をとったのか、どの馬もかなりの控え気味な動きで超スローペース。結局キタサンブラックは内気切り込みハナを取りに行かずそのまま流れた状態で3番手を走行する選択になりました。代わってハナをとったのが、本来差し馬のシュヴァルグラン。シュヴァルグランにしてみればスタートを完璧に決めたことによりキタサンブラックの真後ろを確保できると思ったところを出鼻くじかれ、仕方なくハナを取った状況で、シュヴァルグランには申し訳ないですが、この時点で戦線離脱が決定したレースとなってしまいました。
話は戻しキタサンブラックはというと、そのまま向こう正面でもゆったり流れているレースに身を委ねている感じでしたが、デムーロ鞍上のサトノクラウンが3コーナー手前でキタサンブラック&武豊コンビの視界に入るように押し上げてきたところで、これまでゆったりとしていたレースが激変。急にペースは上がりキタサンブラックもエンジン点火といった状況へ。4コーナー曲がったあたりから手が動き始め、一瞬はハナに立ったものの、前半のゆったりし過ぎたレースのためトップスピード勝負戦となり、この時点でもうトップスピード勝負では厳しくなったキタサンブラックはズルズルと後退し、結果9着と大敗を喫したレースとなってしまいました。
感想を述べるとしたら、結局キタサンブラックは総合力で勝負するタイプだということ。瞬発力勝負やトップスピード持続戦と、何かの能力に特化したレースの場合は、はっきり言って厳しくなるのがよくわかったレース。そして道悪も外外で走っていた割には伸びが弱いことから、マルターズアポジーのような逃げ馬がいない限りは、昔のようにスタートからハナを取って逃げ切る戦法が◎のような気もするレース内容でした。まあ、今回のメンバーはグランプリレースで強敵揃いというのはあったと思いますが、今後も顔を合わせるメンバーとなるので道悪、逃げ馬不在、阪神競馬場は△といったところでしょう。

さすがはデムーロ!サトノクラウンが国内G1初制覇!

終わってリプレイを見たときは思わず「凄い」と叫んでしまったことがあります。
レースはキタサンブラック、ゴールドアクターあたりがハナを取るかと思いきや、まさかのシュヴァルグラン。明らかにペースはスローとなるのが予測できる状況になりました。道悪といっても、若干の重つきがある程度で稍重といった馬場状態でそこまで気にする足場ではなかったはず。さらに言えばスタートからいきなりの下りといったこともあり、宝塚記念の1キロ通過は58秒前後と前半がハイに思えるタイムとなります。何度も言うようにハナを走行中はシュヴァルグラン。1キロ通過は60秒とややスローペースとなっていました。レースはこのままトップスピード勝負かな?と思った3コーナー手前でデムーロ&サトノクラウンコンビが大外からググンと番手を上げ、キタサンブラックと並走。それを見たキタサンブラックはペースアップ。このままトップスピード持続戦へと突入かと思いきやサトノクラウンはペースを上げず、逆に馬群全体に喝をいれてペースアップさせた動きとなりました。まんまとハマったサトノクラウンと他1頭以外の馬が全体に団子状態に。そして直線に入ったところでシュヴァルグランとシャケトラは馬群に沈んで代わりにキタサンブラックがクラリティーシチーの脇をするっと抜けトップへ。しかしそれは一瞬の出来事でキタサンブラックはここでお役御免。粘ったのはシャケトラ。日経賞の時のようにスローからのトップスピード戦と言うことで、この馬にとってはベストなレース運び。しかしそれを物ともせずせず、大外から長いストライプと力強い足取り上がり3FはメンバーNo.1の速さ35.4で差し切ったサトノクラウンが勝利。見事に国内G1初制覇となりました。今回のこのレース。他の馬がどうこうの前に、完全にレースを支配したのは間違いなくデムーロ&サトノクラウン。何も言わずに拍手です。おめでとうございます。

やはり眠っていただけ!ゴールドアクター

昨年の有馬記念の3着を獲った以降の走りが余りにも不本意だったこともあり2ちゃに食い込むと思った競馬ファンも少なかったとも思われます。更に、馬場状態が稍重だったこともあって予想から切った人も多かったようです。枠組みとしては得意の内枠に入っているのでもしかしたらと思われる方も多かったはず。そう、私にとって、実力は折り紙つきですが、どっち付かずで予想困難な一頭でした。
キタサンブラックと同じ唯一の先行馬でスタートは順調、正直そのまま突っ走ればハナを取れた感じですが、かなり控えた形で序盤。おそらく、どんなにスローで流れても、最初からキタサンブラックをマークするつもりでいたのでしょう。2番枠と10番枠で両極端にあるにもかかわらず、ゴールドアクターの左斜め前にはキタサンブラック。キタサンブラックの動きに合わせた展開に持ち込むのがミエミエといった道中で、そこに大外からサトノクラウンがググン番手を上げて一気にペースアップに。どの馬もその流れに飲み込まれスピードを上げていく中、ここでゴールドアクターは反応せず。動いたと言えば外にいた馬体を内に入れるといった作業のみ。番手も9番手まで落としていたことから、ここから追い込むには脚質が差し馬のメンバーが多い中で上位に食い込むのは無理だろうと感じ、正直、「あー、ダメか」と思った瞬間でした。4コーナーを9番手で通過し、直線に突入。一気にトップギアのトップスピード勝負。競馬中継のアナウンサーが「最内から延びる黒い馬体だ、ゴールドアクターだ」と。そう、ものすごい勢いで、まるで2年前に有馬記念をとった時のような勢いで最後はシャケトラをかわしてゴールイン。1着のサトノクラウン同じ上がり3Fが35.4とメンバー最速で牛蒡抜きでした。
正直なところ、ギアチェンジが数回行われるレース内容となるよりレースが流れていくほうが得意と思っており、更には高速馬場ではないと走れないと思っていただけに、自分の中のゴールドアクターのイメージが一掃されたレースでした。
先週のピーカンが続いていたらゴールドアクターが本命と思っていただけに、今回の収穫は非常に大きいものでした。

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キタサンブラックの勇姿をもう見れないと思うと、やはり寂しい気持ちになりますね。