上背はないものの、類まれなるセンスとフィジカルでゴールを量産し、冬の選手権大会で得点王に輝きました。その年、大前選手の活躍もあり、流通経済大柏高校は初優勝を飾ります。このときの決勝戦の相手藤枝東高校にいた河井選手や村松選手とともに在籍していたシーズンがあったと思うと感慨深いです。今も大前選手と河井選手はチームの主力としていいコンビプレーを見せています。

当時の清水は4-3-3のフォーメーションでFWのポジション争いは激しいものでした。日本代表でもゴールを量産し続ける岡崎選手や元ノルウェー代表のヨンセン選手、ほかにも当時のエースナンバー、10番、藤本選手などそこに割って入る余地はありませんでした。それでも2011年シーズンからレギュラーを掴むと攻撃をけん引します。その活躍もあり、2013年からはドイツのデュッセルドルフに海外移籍を果たしました。しかしドイツでは活躍できず、期限付き移籍という形で清水に戻ってきました。翌2014年からは清水が完全移籍に踏み切りました。契約切れで移籍し、移籍金を払って戻ってきたことに大前選手本人も結果で返すという思いが強くなったようです。背番号も10番を着ることになりました。

2014年シーズンは最終節でJ1残留を決めましたが、2015年シーズンも残留を争いクラブ史上初のJ2降格となってしまいました。シーズン終了後、J1ヴィッセル神戸などから獲得オファーもありましたが、オファーをけり、清水を1年でJ1に戻すべく清水に残ることを決意しました。J2でも思うようには勝ちきれずなかなか浮上できずサポーターももやもやしていました。そんななか行われた対町田ゼルビア戦。この試合は大前選手がPKを決めて先制に成功します。その後は拮抗した試合となりましたが、悪夢の瞬間は前半40分。そのプレーの直前で不可解なイエローカードをもらって気は立っていたのかもしれません。町田ボールのコーナーキックが逆サイドへ流れた際、相手選手と競り合いになり、接触。私には相手選手がわざと膝をたてて当てに行ったようにしか見えません。その膝が入り、肋骨の骨折と肺挫傷、全治3か月となりました。

先日行われたモンテディオ山形戦。ベンチ入りメンバーの中に大前選手の名前が入りました。この日を待ち望んだサポーターからは大きな拍手と鳴りやまない大前選手の応援。そして後半32分、ついにその瞬間が訪れました。その日1ゴールを決めた金子選手に代わって投入された背番号10。出場直後からブランクを感じさせない動きで相手を翻弄し、サポーターを魅了します。白崎選手から出されたスルーパスに素早く反応し、体を入れると相手DFはたまらずファールを犯します。１発レッドになるような決定機でしたが、これで獲得したフリーキックを自らゴールに沈め、復帰戦で見事にゴールを決めました。3か月のブランクにも関わらず、得点王もまだ視野に入る状況で、今後の活躍を期待しています。